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高速演算記 第26回 「GPU Technology Conference 2013@San Jose」

 皆様こんにちは、プロメテック・ソフトウェアの花田ともうします。

 今回、先月に米国で開催されましたNVIDIA社のGPU Technology Conference 2013に参加し、最新のGPUトレンドを含め様々な刺激を受けて帰国しました。既にカンファレンス內容は多くのメディアを通じて発信されているかと思いますが、ここではシリコンバレーエリア訪問のちょっとしたTipsと、読者の皆様の関心が高いTeslaに絞って話題をご提供出来ればと思います。

 GPUコンピューティングが本格的に普及し始める中、今年もNVIDIA社が主催する世界最大のGPUコンピューティングに関するイベント、「GPU Technology Conference 2013 (GTC 2013)」が米国カリフォルニア州のサンノゼで開催されました。3月18日(月)から21日(木)までの4日間の会期のうち、2日目のNVIDIA社ジェン・スン・フアンCEOの基調講演を中心として400を超す様々なセッションを聞きに、世界中より3,000人近い参加者が集まるという非常に活気溢れるイベントでした。

 

本題の前に

 これまで、日本からサンノゼを中心とするシリコンバレーエリアを訪問する際は直行便が無かったため、米国内で国内線に乗り換えて向かう必要があり、その分だけ余計に時間がかかっておりました。ところが、先だって全日空が成田=サンノゼ線を就航させたことで、シリコンバレーが今まで以上に近い場所になり、私も含め搭乗を楽しみにしていた関係者も多かったことと思います。・・・が、成田=サンノゼ線の機材はボーイング787型機だったために、皆様ご存知のように全機運行停止命令中ということで、当然ながら成田=サンノゼ線も中止となっており非常に残念な思いをいたしました。 そこで今回は、羽田から深夜便でサンフランシスコに飛び、そこから列車(Caltrain)で南下してサンノゼに至るルートを取ってみましたので、その話を少し書かせて頂きます。

 日本からアメリカ西海岸に向かう場合、一般的なフライトスケジュールとしては成田を昼~夕方の便で出て、同日の午前中に現地に着くパターンが多いかと思います。この場合、出発日の日本国内での時間は実質的に空港に移動・搭乗して終わってしまうことや、到着が午前~昼頃になってしまうことで、午後からの打ち合わせであればまだしも、今回のカンファレンスのように朝から興味深いセッションが多数組まれている場合、なかなか時間を有効に使いづらいと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方には、羽田=サンフランシスコ線を使うことをおすすめします。

 この路線は、日本航空とアメリカン航空の共同運航便で、羽田の出発時間は深夜0時5分です。ということは、都内に住んでいる場合は普段通り仕事をこなした後に空港に出発し、そのまま機内でぐっすり眠ることができます。また、サンフランシスコへの到着時間は前日の夕方になりますので(火曜の0時5分に出発すると、月曜夕方に到着)、そこから電車でサンノゼに移動すれば、夜にはホテルに到着して夕飯を食べ、十分に余裕を持って翌日に備えることが可能です。

 

 広くて綺麗なサンフランシスコ国際空港
 

 サンフランシスコ空港からサンノゼまでのアクセスも非常に容易です。サンフランシスコの地下鉄、BART(http://www.bart.gov/guide/japanese.aspx)が空港に乗り入れていますので、これに乗ってMillbrae駅に移動します。Millbrae駅でCaltrain(http://www.caltrain.com/)に乗り換え、南行き(Southbound)の列車に揺られること小一時間でサンノゼに到着です。ちなみにこのCaltrainですが、シリコンバレーを南北に貫いていることから、日本でもよく知られている企業の本社(の最寄り駅)を次々に通過していきます。レッドウッドシティ(オラクル、エレクトロニック・アーツなど)、バロアルト(ヒューレット・パッカード、フェイスブックなど)、マウンテンビュー(グーグルなど)・・・シリコンバレーに来たことが実感出来る、非常に良い列車の旅ではないでしょうか。

 

カルトレインでカルフォルニアの青空のもと、サンノゼへ
 
 

GPUコンピューティングの動向

 さて、19日(火)午前のNVIDIA社ジェン・スン・フアンCEOの基調講演において、今後のGPUのロードマップやGPUコンピューティングの最新活用事例など、興味深い5つのトピックが明らかにされました。ここでは皆様が最も関心の高いTeslaに関する內容を中心にお伝えしたいと思います。

 

早朝のコンベンションセンター

 

GPUコンピューティングの広がり

GPUコンピューティングというと、まず真っ先に思い浮かぶのが東京工業大学のTSUBAME2.0に代表されるHPC分野かと思います。基調講演中では、この分野での2008年と2013年の状況が比較されていました。ジェン・スン・フアンCEO によれば、2008年時点でGPUコンピューティングを取り入れたスーパーコンピュータは1システムしか無かったのに対し、2013年時点では既に世界で50システムが稼働しているとのことで、少なくともHPC分野ではGPUコンピューティングによる処理性能の向上が一般的なアプローチになって来たことを改めて強く感じました。昨年11月のスーパーコンピュータTOP500で1位を獲得したのは米国オークリッジ国立研究所のTitanでしたが、TitanもTesla K20Xを採用したシステムであったことは記憶に新しい出来事かと思います。

 

立ち並ぶGPUコンピューティングのポスターと人

 

また、HPC分野にとどまらず、基調講演ではより私たちの生活に身近なサービスにおけるGPUコンピューティングの成果についても3つ紹介されました。「SalesforceにおけるTweetの解析」、音楽検索サービスの「Shazam」、それから「イメージ検索」です。

 

身近なサービスでの活用事例

Twitterで呟かれている方も多いと思いますが、2012年の時点ではたった1日で5億件ものツイートが増えているそうです。このツイートというビッグデータに対し、SalesforceとTwitterが提携することで、ユーザーが任意のキーワードで検索した際に結果を返せるようにしているとのことですが、この検索システムにおいて2台のNVIDIA GTX 580を使用することで大幅な高速化を実現することが出来たとの発表がありました。

またもう一つ、音楽検索サービスのShazamにおいてもGPUが活用され、月間3億件もあるユーザーからの検索クエリを処理しているとのことです。Shazamは、ユーザーが街角などで聞いてふと気になった曲を、スマートフォン等に聴かせることでデータベースと照合し、アーティストや曲名を提供するサービスを行なっています。スマートフォン等のアプリですので、検索結果を瞬時に返せなくてはアプリを利用してもらえないとのことですが、GPUを用いることでタイムリーにユーザーのリクエストに対応できているそうです。

ビッグデータに対するテキスト検索、楽曲の検索と来て、最後はイメージ検索の事例が発表されました。イギリスのCortexica Vision Systemsでは、スマートフォンやタブレット等のカメラを用いて、撮影した写真と近しいイメージを提示する検索エンジンを開発しています。講演では、女優が掲載されている雑誌のページを撮影し、そこから近しいイメージの服の候補を提示するデモを披露していました。

これら3つの事例から見えることは、検索対象となるビッグデータから、目的とするデータを素早く検索し、提示できる仕組みがGPUを用いることで効率よく構築できること。また、様々なリクエストが次々と来るコンシューマー向けのサービスにおいても、GPUは十分に使える技術になってきた、ということではないかと思います。

 

Teslaロードマップ

最後にTeslaのロードマップについて触れておきたいと思います。NVIDIA社では、GPUを単なるグラフィックボードから並列計算に最適なハードウェアとするべく、ここ数年で様々な改良を施してきました。CUDAのリリースを軸とする開発環境の整備はもちろんのこと、ECCの導入や倍精度演算への対応は、計算精度が求められる数値シミュレーションにとっては非常に大きな意味を持つ進化でした。一方で、依然としてGPUコンピューティングがさらに広まる上での幾つかの課題も残っていると感じています。

そのうちの一つがGPUのメモリバンド幅です。数値シミュレーションのうち、例えば粒子法による流体シミュレーションのように、計算の過程で多くの情報の交換が発生するアルゴリズムの場合は、GPUコアの演算速度よりはむしろ、メモリバンド幅がボトルネックになってシミュレーションのパフォーマンスが制約を受けていました。

今回のカンファレンスで初めて発表された次々世代GPU「Volta」では、この課題に対し、Stacked DRAMという技術を用いることで1TB/sのメモリバンド幅を実現することを目指しています。これは現時点で最速と言われるGeForce GTX TITANの4倍弱、またKepler世代のTeslaと比較しても5倍超の高速化となり、メモリバンド幅の制約からGPU上ではパフォーマンスが出ないと言われていた様々なアプリケーションの可能性を大きく広げるものと受け止められました。

NVIDIA社のロードマップではVoltaの投入時期は明示されていなかったのですが、これまで大体2年サイクルで新製品を投入してきたことを考えれば、2016年頃を目指した製品ではないかと考えられます。ソフトウェアを開発し、GPUをフル活用している側としては、一日でも早くVoltaをリリースして欲しいと心から願っております。

 

ロードマップ発表時にスクリーンを見上げる人、写真を撮る人

 

おわりに

 GTCは2009年からほぼ毎年開催され、今回で4回目となりました。初回のGTCでは、ジェン・スン・フアンCEO の熱のこもった基調講演の他は、NVIDIA社の製品紹介やGPU上での実装方法など大分マニアックな內容が中心のイベントだったと記憶していますが、毎年会議に参加する度に、規模は大きく、また內容は濃くなってきているのを実感します。今では様々なソフトウェアベンダやユーザーが、実際の事例も含めてGPUコンピューティングの成果を発表する場になっており、この数年間でGPUコンピューティングが本当に多くの分野で活用され始めたことを如実に表していると思います。また現地でAMD社のエンジニアと話す機会を得た際は、GPUコンピューティングという観点ではNVIDIA社が現時点で事実上スタンダード、との声も聞きました。GPUを使いこなすための開発環境やアプリケーションも次々にリリースされていることから、数年前と比較するとハードウェア・ソフトウエア両面において、安心して使える技術になってきた、というのが率直な感想でした。

 

 最後に宣伝を一つ。

今回のカンファレンスでは、NVIDIA社が製造業におけるGPUコンピューティングの活用を強力に推進していく旨を表明したこともあり、特に日本では製造業分野での利用が今後大きく進展していくことが期待されます。

そこで、G-DEPでは製造業においてCUDAを活用して頂けるように、様々なセミナーやハンズオンスクールをこれからも積極的に企画して参ります。世界で静かに進むGPUコンピューティングのトレンドに乗り遅れないためにも、是非皆様のご参加を心よりお待ちして申し上げております。